8.2 ブロックチェーンは量子コンピュータによって破られるか?

破られるリスクがあるかということであればあるだろう。特にラボレベルでは破られる可能性は十分考えられる。

ブロックチェーンをラボ内のプライベートネットワークで作り、量子コンピュータがブロックチェーンを破るという証明だけのために環境をセットして行えば十分可能と思われる。

しかし、社会実装レベルで破られるかは別問題だろう。

すでに実装稼働中のブロックチェーンを破る量子コンピュータを作ろうとすると、スケーラビリティを確保するための技術的難易度は相当高くなるし、こうした技術を実装する費用は、ブロックチェーンを破ることで得られるベネフィットに比較して、ペイしないレベルと思われる。

また、もし万が一、仮にスケーラビリティと費用面を解決したブレークスルーがあったとすると、ブロックチェーンを破るところの話ではなく、世の中のあらゆる既存のセキュリティシステムが破られることになるだろう。

多分ブロックチェーンは後回しで、もっと簡単にブレークできるオンラインバンキングやオンラインビジネスの金庫を狙うのではないだろうか。こういう事態になると世界中の国や金融機関が束になって政治的に量子コンピュータの実用を阻止ししたり、大幅な使用制限をかけたりすることになるに違いない。

また、2020年にはアメリカの研究で、量子コンピュータとブロックチェーンを組み合わせたシステムを作ろうとしていた。むしろこういうシステムができた際には、ブロックチェーンを量子コンピュータでラッピングする感じになり、結局量子コンピュータは量子コンピュータを破れるかという話になるだろう。

ブロックチェーンは盾、量子コンピュータは矛。

矛と盾を組み合わせたシステムを盾でやっつけられるだろうか。