3.5 サイコロジー

ブロックチェーンの重要な側面として、行動経済学的に期待される行動をブロックチェーンネットワークの参加者が取るようなサイコロジカルな設計がなされていることがある。

行動経済学とは、ヒトは経済合理的な行動をとることを前提として、それを制度設計や技術設計に活かしていく学問分野である。これはシカゴ大学教授のリチャード・セイラー博士が2017年にノーベル経済学賞の受賞理由となったナッジ理論(Nudge Theory)で世間一般にも有名になった学問分野である。

たとえば、ブロックチェーンでは、仮にブロックチェーンネットワークを乗っ取って、ビットコインを窃取しようとしても、そこにかける労力よりも、マイナーとして参加する方がメリットが高いため、窃取しようとするインセンティブが働かないようになっており、行動経済合理性にかなった設計となっている。

たとえば、ブロックチェーンを乗っ取ろうとする人が登場したとしよう。テクニカルにはブロックチェーンのマイニングパワーの過半を占有できれば乗っ取ることは可能である。これを51%攻撃と呼ぶ。

しかし、そのようなことは起きない。なぜなら、そのようなことをするとそのブロックチェーンに記録されているデジタル化された財産の価値が失われるからである。マイナーはそのブロックチェーンが発行する仮想通貨で報酬をうけるので、自らその財産価値を縮小させるような行動をとらない。

実際に、ビットコインのブロックチェーンネットワークで、特定のマイナーが過半を占有しそうになったことがあるが、ビットコインの価格が下落したため、そのマイナーは過半を超えないようにマイニングパワーを落とすという行動をとった。

ブロックチェーンは行動経済学的に合理的なのである。マイナーの経済合理的な行動心理をついた仕組みである。