1.0 ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンとは何か

ブロックチェーンとは、「デジタル化された価値」を仲介者をおかずに「ピアツーピア」で「正しく交換または保存できる仕組み」である。

「デジタル化された価値」とは、仮想通貨、ゲーム・アイテム、デジタル情報化された芸術作品、デジタル情報化された音楽などのことを指す。これらをデジタル資産と呼んだり、暗号資産と呼ぶこともある。本解説では以降、これらのことを総称して「デジタル資産」と呼ぶこととする。

「ピアツーピア(Peer-to-peer, P2P)」とは、ネットワークに存在する対等の関係にあるコンピュータ同士(=ピア同士)が直接通信を行い、何らかの情報交換や取引などを行うシステムのことである。

「正しく交換または保存できる仕組み」とは、たとえば、あるデジタル芸術作品の所有者であるアリスが、1ETH(※ETHはイーサリアムという仮想通貨の通貨記号)を対価としてボブにそのデジタル芸術作品の所有権を譲渡する場合で考えてみると、次のようなものである。

1. ブロックチェーン上で所有権利者がアリスからボブに書き換えられる

2. アリスのイーサリアム残高が1ETH増加し、ボブのイーサリアム残高が1ETH減少する

3. ブロックチェーンに刻まれた所有権利者の記録は、次の権利譲渡があるまで書き換えられたり改ざんされることはない

4. ブロックチェーンに刻まれたアリスとボブのイーサリアム残高は、次の振込みまたは引出しがあるまで、書き換えられたり改ざんされることはない

1と2は正しい価値の交換、3と4は正しい価値の保存のことである。
今回は仮想通貨としてETHの例を示したが、ビットコイン(BTC)などの別の仮想通貨でも構わない。

これは極めて単純な仕組みであるが、信用できる中央機関を媒介することなく、ピアツーピアで実現することは2008年まで極めて難しいこととされてきた。

デジタル情報はコピーや書き換えが容易であるため、お互いに必ずしも信用することができないピアの間で、デジタル化された価値をデジタル空間で唯一存在することを証明し、その価値の権利者や保有者を正しく記録し、かつその改ざんを防ぐことは難題であったからである。

しかし、2008年10月31日にSatoshi Nakamoto氏の論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」がこの難題への解を与えた。