ビットコインのマイニングに多量の電力が消費されていることから、このような質問は多い。
ビットコインのマイニングで消費する電力量は、マレーシアやスエーデンの国全体の消費量に匹敵するという話をきく。そして多くの人が、環境に良くないという結論に至っている。
同意形成アルゴリズムによる違い
まず、本項のタイトルが「ブロックチェーンは」という主語になっていることに注意していただきたい。
ブロックチェーンは必ずしもビットコインだけではない。Proof-of-Work(PoW)という同意形成アルゴリズムを使うと、多量に電力を消費する傾向にはあるのは事実である。
しかしながら、Proof-of-Stake(PoS)やProof-of-Authority(PoA)や他にもいろいろな同意形成アルゴリズムがあり、その消費電力量はまちまちだ。
イーサリアムは2022年9月14日から15日かけて同意形成アルゴリズムをPoWからPoSへ変更した。
DigiconomistのEthereum Energy Consumption Indexによると、このアルゴリズムの変更により、9月14日から15日かけて推定年間消費電力が77.77TWhから3.40TWhへと激減した。割合にしておよそ96%の減少となる。2023年6月30日現在の推定年間消費電力は0.01TWhであり、さらに減少していることがわかる。
ブロックチェーンコミュニティの人たちの中にはブロックチェーンが環境に与える負荷を気にしている人たちがおり、日々技術革新を進めている。環境意識の高いユーザー側は、このような技術動向に敏感となり環境にやさしいブロックチェーンを選択していくだろう。
ハーバード・ビジネス・レビュー掲載記事での議論
2021年5月5日付のハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)に「ビットコインは実際どのくらいエネルギーを消費しているか?(How Much Energy Does Bitcoin Actually Consume?)」(注:邦題は筆者訳)という記事が掲載されている。
この記事が議論しているのは次の点である。
1)ビットコインを何の目的で使用しているかが重要
たとえば、マネーロンダリングのために使われているとすると無駄な消費であるが、インフレの制御、金融抑圧などの金融政策に使われるのであれば、有効利用と考えて良いのではと考察している。
2)ビットコインのマイニングの電力消費量はそのままカーボン排出量ではない
ビットコインのマイナーたちの中には、水力発電によって電力を賄っている人たちがいる。先のHBRでは、複数のソースから39%から73%のビットコインの消費電力がカーボンニュートラルであると見ている。