医療とエコノミーには密接な関係がある。
エコノミーにはストックとフローが存在する。
世間一般に関心が高い医療費というのはフローの議論であることが多い。そして、少子高齢化社会の到来の中で、医療費の増大に戦々恐々としているのが現状である。
一方で医療のストックは、議論されることは少ないし、その価値は十分把握されているとは言い難い。
医療施設の資産価値にも有形資産と無形資産が存在するが、医療関係者が蓄積した知的財産の価値を評価したらどのくらいの規模になるのだろうか。診療ノウハウ、研究論文、特許、商標、ブランドなど、病院によって評価は大きく異なるはずだ。
医療におけるデジタル資産とは、まさに健康医療データを指すと考える。この健康医療データは、診療データ、臨床研究や試験データ、健診データ、レセプトデータといったものである。
健康医療データは国家の保健行政や民間の医療関連企業にとっても重要な資産であり、金銭的価値を持ってとともに利活用されている。
しかし、個人レベルで自身の診療データ、健診データを自己資産と認識していたり、権利意識を持っていたりする人は日本においては極めて稀である。人類にとって、人間一人ひとりの存在自体が価値である。
そこで経済的にはこの一人ひとりの価値をどうにか数値化したいという話になる。一つの方法として、労働への対価としてヒトの価値が数値化されることがある。しかし、これはフローの見方であって、資産の概念で捉えたストックではない。では、どのようにヒトのストックとしての価値を数値化するのか。この疑問への現在実現可能な答えが、健康医療データと考える。
この考え方はさらにデジタルミーという、デジタル化した自分の分身の話に発展していくものであるが、本項では触れない。
話を戻すと、健康医療データには価値が存在しているのだが、個人レベルで報酬を与える仕組みはない。これは技術的な問題というよりは倫理的、法制度的議論と準備が必要とされるところにハードルがある課題である。
そして、個人は医療デジタル資産活用議論において蚊帳の外なのだ。
ブロックチェーンは、この状態に変化をもたらす可能性のある一つの光明である。
ブロックチェーンの暗号化技術によって個人の特定を避けながら、個人が健康医療データを提供し、それに対してなんらかの報酬を与える道が開かれる日がくるだろう。